今回は
漫画界の巨匠、手塚治虫さんの『ブッダ9巻(新装版コミックス)』に収録されている
『ルンチャイと野ブタの物語』を紹介します。
私自身何だか感ずるものがあり、記事を執筆するに至りました。
漫画「ブッダ」に収録の「ルンチャイと野ブタの物語」を紹介
ルンチャイが言った嘘
むかし、インドのシッキムという国に
ルンチャイというぐうたらでうそつきの子供がいました。
ある日、ルンチャイは学校に行く道中で開催されていた「カエル飛びの試合」に夢中になり、学校の授業に遅れてしまいました。
「ルンチャイ、今何時だと思う!?
なぜ遅れたのかハッキリわけを言わないと許さんぞっ」
先生がすごい剣幕で怒鳴ります。
※『ブッダ9巻(新装版コミックス)』より画像引用。
先生に怒られるのは嫌だと思ったルンチャイは
「あの...かあさんが病気で」
嘘をつきました。
「病気!?近所の人に頼んで、看病してもらえばよいではないかっ」
先生が詰問します。
「あのぉ...それが...死んじゃって」
ルンチャイは『母親が死んだ』とさらに嘘をつきました。
すると、
今まで鬼の形相だった先生は、母親を亡くしたルンチャイのことを哀れみ、
授業を休んで、家に戻れと促しました。
「へんなことになっちまったなぁ」
自分のしたことを若干悪いと思いながらも家に戻りました。
「ただいま」
家に戻ると、母親の姿がありませんでした。
「お使いかな」
どこかに出かけているとも思いましたが、家には母がいつも着ている着物が脱ぎ捨ててありました。
ルンチャイの母親を取り戻す旅
「うちの母さん見なかった?」
ルンチャイは近所に住んでいる老婆に聞きました。
※『ブッダ9巻(新装版コミックス)』より画像引用。
すると、老婆は
「黒い服を着た怖い人が二人来てさ。
あんたの母さんを無理やり引っ立てていったのを見たよ。
どちらさんですかと聞いたらこっちをにらみつけてね。
この女は死んだのだ。この女の息子が言うには
もう母親はいらないそうだ!だから連れていく」
と母親がいなくなった経緯を話しました。
自分のついた嘘が恐ろしい結果を招いてしまった。
自分の行いを後悔するルンチャイ。
ここから母親を取り戻すための旅が始まります。
何もない山道を夢中で走る
大きな木の苔を七日七晩はがす
トラの力を借り、草原を超える
煮え切った泥の川を大きな軽石に乗って渡る
ルンチャイは
いくつもの険しい道のりを乗り越え、
なんとか母親がいる「マーラの城」にたどり着くことができました。
「おねがいします。母さんに会わせてください」
城の門の前でルンチャイが叫びました。
すると、
「はいれ!!」
門が開きました。
城の中に入ると、マーラが現れ、
「見ろこぞう。貴様の目の前にあるものがきさまの母親よ!!」
目の前に現れたのは泣いている野ブタでした。
マーラは、
ルンチャイの母親は死んで、野ブタに生まれ変わったと言いました。
※『ブッダ9巻(新装版コミックス)』より画像引用。
「もとの母さんを返してくれーっ」
ルンチャイは野ブタに抱き着き泣きわめきました。
すると、マーラは
「それなら、きさまが代わりにブタの姿になるかっ。
母親を人間に戻すにはきさまをブタにせねばならぬのだ」
ルンチャイに問いただしました。
「いいです。母さんさえ助かれば僕、ブタでもいい!」
ルンチャイはマーラに言い放ちました。
「よーし。その言葉忘れるなっ」
ルンチャイにマーラの魔術がかかりました。
ブタになったルンチャイ
場面が切り替わり、
ルンチャイの母親が登場しました。
母親が道を歩いていると、
一匹の可愛い小さな野ブタが目の前に現れました。
「ブウブウッ」
野ブタは母親に寄り添い、どうやら懐いている様子でした。
それもそのはず、この野ブタはルンチャイの生まれ変わりです。
「飼っておやりよ。寂しさもまぎれるからね
こないだ亡くなったあんたの息子の供養にもなるし」
近所の人々が母親に言いました。
このシーンから推測するに、
ルンチャイの母親が連れ去られたという出来事がなくなっており、
代わりにルンチャイが死んだことになっているという事象の変化が起きています。
野ブタはまだルンチャイとして生きていたときの記憶があるようで、
ルンチャイだと気づいてほしくて、母親の前で泣きわめきましたが、
母親や近所の人は全く分かりません。
野ブタは母親のもとで飼われることになりました。
日々経つにつれて、野ブタもルンチャイとして生きた人間のときの記憶が次第に薄れていきました。
何年か経ち、ルンチャイも大きな野ブタに育ちました。
この時、野ブタはルンチャイだったときの記憶は完全になくなっています。
ある日、豚小屋の前をブッダが通りました。
「見事なブタですね」
ブッダが母親に話しかけました。
「ええ、もうじき肉商人に売るんです」
母親も返答しました。
※『ブッダ9巻(新装版コミックス)』より画像引用。
ブッダは目の前の大きなブタを見て、何かを感じ取ったようで、
「おくさん、このブタを売るのはおやめなさい。
殺すのもいけません。
おくさん、あなたには息子さんがいましたね。」
唐突にブッダが言い当てました。
そして、ブッダは
息子が母親を心から慕っていたこと、
そして、身代わりになったことを伝えました。
さらに、ブッダは
「息子さんにせよ誰にせよ、死ねば生まれ変わります。
だが人間に生まれ変われるとは限らない。
ちっぽけな生き物かもしれない。
だが、息子さんだった霊はどこかで何かになって生きています。」
と輪廻転生について話しました。
それから、
「あなたはこれから死ぬまで殺生をしてはいけない。
肉を食べてもいけないし、虫一匹殺してもいけない。
そうすればいつかあなたは新しい子供を生むでしょう。
その赤ちゃんに前の息子さんの名前をつけなさい。」
と母親に伝え、去っていきました。
※『ブッダ9巻(新装版コミックス)』より画像引用。
それからまた数年が経ち、
ブタは長生きした末に静かに死んでいきました。
その同じ日、再婚した母親に新しい赤ん坊が生まれました。
母親はブッダの言いつけ通り、その赤ん坊にルンチャイという名前をつけました。
~おわり~
まとめ
今回紹介した『ルンチャイと野ブタの物語』は
嘘をついてはいけないという人生への戒めの物語であると同時に、
輪廻転生をテーマに描いたエピソードです。
最終的には、
ルンチャイの母親はブッダの言いつけ通り、ルンチャイの生まれ変わりである野ブタを大事に育て、野ブタは大往生することができ、ハッピーエンドで物語が終わりました。
ただ、ブタとなり、
母親に自分のことを気づいてもらえないルンチャイ、
徐々に人間のときの記憶が薄れていってしまうブタとなったルンチャイ、
母親が赤ん坊を抱える傍らで、息絶えるルンチャイ
といったちょっと切ないなと感じるシーンもありました。
家族であったり、恋人であったり、友達であったり。
我々が今生きている人生の中で出会った人たちと
どんな形でかは分かりませんが、
来世でも繋がっているかもしれませんね。
また、
前世で関わっていた人が、今、何かの形で関わっているかもしれません。
そんな考えもできますね。面白い。
そう考えると、
言い方はおかしいかもしれませんが、
「人間含め、生き物を丁寧に扱う/接する」
大切なことだと思います。
今回もご覧いただきありがとうございました。
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