老年人口が増加する一方で生産年齢人口が減少している「日本」。
1945年には、生産年齢人口10人でおおよそ1人の高齢者を支えていたのが、
2025年には、2人で1人を支えることになります。
この傾向は今後さらに加速すると予想されています。
「介護」と「外国人労働者」
老年人口が増加するとともに、人手不足が問題となるのは、
やはり「介護」の業界。
日本人の労働力だけでは、おぎなえず、
以前からさまざまな「外国人介護人材」を受け入れるための制度を施行してきました。
簡潔ではありますが、現在日本が施行している4つの制度を紹介します。
①技能実習制度
開発途上地域等への技能等の移転を図り、その経済発展を
担う「人づくり」に協力することを目的とする制度。「介護」以外にもさまざまな業種がある。
対象国は、14か国。二国間取り決め(協力各書による)。
厚生労働省HPより引用
②在留資格「介護」
介護福祉士の資格を持つ外国人が介護施設との契約に基づいて介護(又は介護の指導)の業務に従事。
典型的な流れとして、在留資格「留学」から「介護」に変更する。
日本で介護福祉士の「国家資格」取得後、介護施設で業務を従事する。
対象国は規定なし。
③EPA(経済連携協定)
経済交流・連携強化の一環として、特例的に看護・介護人材の候補者を受け入れるもの。
日本の介護施設で就労・研修をしながら、介護福祉士の「国家資格」取得を目指してもらうことを目的とする。
対象国は、インドネシア、フィリピン、ベトナムの三か国。(2020年時点)
④特定技能
日本において人手不足が深刻な14業種を対象に新たな外国人受け入れを見込む。
制度の中では、一番新しい。(2019年施行)
二国間取り決め(協力各書による)。
厚生労働省HP より引用
特定技能に関しては、以前にも記載しました。
こちらをご覧下さい。
「介護」の分野で外国人が働くために現在日本が実施している重要な4つの制度。
「特定技能」だけが人手不足を改善する目的で創設されましたが、
実際は他の4つも「人手不足解消」の意図はあると思われます。
特定技能「介護」
2019年4月から施行された「特定技能」制度。
今後5年間で34.5万人の受け入れを見込んでいます。
その対象14業種の中で、最大受け入れ見込み数が最も多いのは、
やはり「介護」。
その見込み数は、5年間で最大6万人。
「介護」の業界は従来から上記に挙げた制度で、外国人介護人材を受け入れてきました。
厚生労働省の推計によれば、
2025年の介護人材の需要見込みは253.0万人。
介護人材供給見込みは215.2万人。
よって、差し引き37.7万人の介護人材が不足することとなります。
この不足を補うために「特定技能」の枠組みができました。
2000年から2013年までの間の介護職員の推移をみれば、
13年の間で116万人に増加しています。
2000年 55万人。→2013年 171万人
※厚生労働省「2025 年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)について」より引用
ただ、介護職への理解・イメージ向上が不十分で魅力的な職業としてみれないことや
「専門性が不明確」「役割が混在」「将来展望が見えづらい」などから職員が早期離職することから、安定しているとは言えません。
このような理由で日本人労働者が集まりにくい現状があるので、この「特定技能」制度の期待は高いと言えます。
大事なのは外国人労働者のための「環境整備」
具体的に箇条書きで書いていくと、
・悪質な送り出し機関の排除(技能実習制度の問題点を参照)
ふさわしくない高額な手数料を取られる。
事前に説明を受けた賃金よりはるかに安い。
・日本語コミュニケーション能力の教育
ただ、日本語を教えるのではなく、各分野で適応できる人材づくりを。
「介護」業界で例えるなら、
利用者(高齢者)の日本語を聞き取り、正しく理解する日本語を指導すること。
地域によっては方言も指導する必要がある。
「介護」特有の専門用語を教える必要もある。
・「留学」から「就労」へ
2017年の外国人留学生を対象とした調査では、半数を大きく超える64.6%が「日本で就職」を希望すると回答。
ただ、実際に日本国内で就職している人の割合は、32.4%にとどまっている。
やはりポイントとなるのは、「日本語力」。常勤の従業員として雇用されるには、単に日本語能力試験などの試験に合格するということだけではなく、実際に就職してからの業務で使える日本語を培う必要がある。
また、日本語を教える「日本語教師の教育」にも重点をおく必要がある。
これからは、日本だけでなく、世界中の多くの国が人口減少、労働力不足を迎える時代になっていきます。
国際的な労働力の奪い合いはすでに始まっており、日本もさらなる経済強化のために、外国人が働きたいと思えるような「魅力的な国づくり」を目指さなければなりません。