「顔色悪いけど、体調大丈夫?」
「大丈夫です」
「レジ袋は必要ですか?」
「大丈夫です」
「ポイントカード、お作りしますか?」
「大丈夫です」
「この服、試着しても大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です」
「今日、飲みに行きませんか?」
「大丈夫です」
あらゆる場面で使われる「大丈夫」ということば。
みなさんのなかにも、日常でよく使っている方、耳にする方、いらっしゃると思います。
また、この「大丈夫」は外国人のみなさんがよく戸惑うことばでもあります。
日本人の友達をご飯に誘って、「大丈夫です」と言われたけど、
「ご飯に行ける」という意味なのか、「行けない」という意味なのか分からない。
今回はそんな「大丈夫」について話していきます。
「大丈夫」の本来の意味
大丈夫
【名】
立派な男子。
【形動】
①危険や心配のないさま。まちがいがないさま。
②きわめて丈夫であるさま。非常にしっかりしているさま。
【副】
よい結果になることを信じ、それが確かであることを保証するさま。まちがいなく。たしかに。きっと。
※「大辞林第三版」より引用
本来の意味は、「立派な男子」
中国の周の時代に生まれた言葉です。
成人した男性の背丈が「一丈(約170㎝から180㎝)」あったことから、彼らのことを「丈夫」と言いました。当時は長さの単位を「丈」で表していました。
そして、「丈夫」の中でも特に大きく強い男性を「大丈夫」と言いました。
それから、この言葉が日本に伝わって、「強くてしっかりしているさま」「危険や心配がないさま」を「大丈夫」と表現するようになりました。
つまり、「大丈夫」とは、とても強くて安心できるという意味です。
上記に例で挙げたように
自分のケガや病気のことを気にかけてもらったときに使う
「大丈夫です」や
「このマンションは大きな地震が来ても大丈夫」
といった
強い・安心という意味で使うことができます。
「大丈夫」の誤用
現代において「大丈夫」をよく誤用として使ってしまう場面があります。
それは、
「何かを断る時」
です。
「レジ袋は必要ですか?」
「大丈夫です」
「ポイントカード、お作りしますか?」
「大丈夫です」
私の見解ですが、この誤用は「大丈夫」の意味にある「心配のないさま」が過度に意識されすぎて、広まったのではないかと思います。
正しくは、
「レジ袋は必要ですか?」
「いいえ、結構です」
「ポイントカード、お作りしますか?」
「いいえ、結構です」
「いいえ、結構です」と言ったら、相手に「冷たい奴だな」と思われそうですよね。
実際、「大丈夫です」という言葉の方が優しく聞こえて、やんわり断る印象があります。
以前に「KY(空気が読めない)」という言葉がはやりました。
日本人は
もともと「はい」「いいえ」をはっきりさせないで、「空気を読む」文化があります。
「何かを断る時」に
相手がせっかく声をかけれくれたのに、「結構です」ときっぱり断るのは気が引ける
と日本人は思うわけです。
使い方は誤用でも、
私は、このように相手を思いやる気持ちがあり言葉の使い方が変化することに、
すばらしいことだなと思います。
他の言語にはみられない、日本人の気遣いが生んだものです。
でも、誤用です。(笑)
また、
「許可を得る時」もよく誤用がみられます。。
「この服、試着しても大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です」
正しくは、
「この服、試着できますか?」
「はい、どうぞ。」「はい。お試しください。」
です。
「試着しても大丈夫ですか?」は
「この服を試着するのは安心ですか?」
と捉えられます。
変ですよね。
許可を得る時なので、
「~できますか」「~してもいいですか」が正しいです。
次に、
外国人がよく戸惑う
誘った時の返答でよく使ってしまう
「大丈夫です」
をみてみましょう。
今までの誤用の場面を知っておくと、
まずこの場面で使うこと自体が誤用であると理解できると思います。
「今日、ご飯行きませんか?」
と言われて、
「大丈夫です」
と答える。
「安心です」
と答えていると考えると、おかしいですね。
そして、ここでの「大丈夫」は、
「はい、ご飯に行きましょう」「いいえ、行きません」
両方の意味で捉えることができるという点もあります。
「空気を読む」「相手の表情をうかがう」ことに長けていない外国人にとっては、本当に戸惑うことだと思います。
もし、使うとしても、
「大丈夫です」だけで答えるのではなく、
「はい、大丈夫です」「いいえ、大丈夫です」というように
イエスかノーかを明確にするといいでしょう。
ただ、本来の正しい答え方は
「はい、行きます」「いいえ、行きません」
です。
もし「いいえ、行きません」を言うことに抵抗があるのなら、
「ごめんなさい。今日はちょっと、」などクッション言葉を加えるといいです。
まとめ
「大丈夫」の本来の意味は「とても強くて安心できる」
断る時の「大丈夫です」
許可を得る時の「大丈夫ですか?」
は誤用で、
「いいえ、結構です」「結構です。ありがとう」
や
「~できますか?」「~してもいいですか?」
などに言い直すのがよいです。
曖昧になることから生まれる言葉の誤用。
決して良くないことですが、
相手を思いやることから生まれていると思うと、
日本人として、誇らしい気持ちにもなります。