「田中くん。きのうの書類どこにあるか分かる?」
「あー、ちょっと分かりません」
「ちょっと」という表現は普段の生活の中でよく使います。
しかし、似たような意味で「少し」という表現もあります。
この2つにはどのような違いがあるのか。
「少し」「ちょっと」はどういう時に使うのか。
今日は「少し」「ちょっと」のことばについて話していきます。
①少し
【副】程度がはなはだしくなく、また数量などが多くないさま。わずか。いくらか。ちょっと。
※大辞林第三版
・昨日より少し寒い。
・もう少し右です。
②ちょっと
一
【副】
「ちっと」の転
①数量・程度などがわずかなさま。時間が短いさま。
②軽い気持ちで行うさま。特に何という考えもなく行うさま。
③大層というほどではないが、無視できない程度・分量であるさま。
④(下に打ち消しの語を伴って)簡単には(…できない)。
二
【感】
軽く相手に呼び掛ける語。もしもし。
※大辞林第三版
・昨日よりちょっと寒い。(①の語義)
・もうちょっと右です。(①の語義)
見比べてみよう
「少し」と「ちょっと」
まず、この2つはどちらも
「数量や程度などが少ない。わずかである。」
という意味合いを持つ副詞です。
上にも例文を挙げましたが、
・昨日より少し寒い。
・昨日よりちょっと寒い。
などとどちらでも使えます。
ただ、「ちょっと」の方は、「少し」にはない語義があります。
まず、「大層というほどではないが、無視できない程度・分量であるさま」という意味があります。(「ちょっと」語義③参照)
・その道ではちょっと名の通った人。
・どうだ、ちょっとしたアイデアだろう。
名の通るほどの「大物」であることを示したり、軽視できないほどの「相当」のアイデアを思いついたことを示します。
ここでの「ちょっと」はある水準・程度を超え、相当のレベルにあることを示します。
次に、「ちょっと~ない」「ちょっと~できない」という下に打ち消しの語を伴う場合です(「ちょっと」語義④参照)。
・私にはちょっと分かりかねます。
・彼が犯人とはちょっと考えられない。
ここでの「ちょっと」は数量や程度のことを言っているのではなく、
「簡単にはできない」ということを示しています。
・私には少し分かりかねます。✖
・彼が犯人とは少し考えられない。✖
ここで「少し」を使うのは不適切です。
【最初に挙げた例文】
「田中くん。あの書類どこに置いた?」
「あー、ちょっと分かりません」
ここでも、「書類がある場所を知らない」
私にとってそれは難しい。簡単ではない。
という意味ですので、
単にわずかという意味を示す「少し」は使えません。
さいごに、
「ちょっと、すいません」
など相手に軽く呼びかける時に使います。(「ちょっと」【感動詞】参照)
・ちょっとそこで何してるの。
・ちょっと辞めてくださいよ、部長。
さらに言うと
「ちょっと」は「少し」に比べてカジュアルな表現で使われることが多いです。
・ちょっと時間ある?
・ちょっと相談したいことがあるんだけど
会社の上司などの目上の人に使う場合は「少し」を使うのが適切です。
・少しお時間ありますか?
・少しご相談したいことがあるのですが
まとめ
「少し」「ちょっと」
どちらも「数量や程度がわずかなさま」という意味を持つ。
フォーマルな場では、「少し」を使うのがふさわしい。
「ちょっと」は「少し」にはない活用方法がある。
・昨日よりちょっと寒い。「わずか」
・彼はちょっとした有名人。「相当の」
・ちょっと分かりません。「簡単ではない」