私たちが使う日本語では、頻度や程度を示すときに、さまざまな「程度副詞」を使います。
彼はとても忙しい。
これは非常に難しい問題だ。
大変おいしい料理をいただいた。
「とても」「非常に」「大変」
普通よりも、その事柄・行為の程度が大きいときにこれらの表現をよく使います。
では、いったい何が違うのか。
今回は、ポイントを押さえながらこのような「程度副詞」について見ていきましょう。
よく使う「とても」
とても熱心に勉強した。
私たちは、何か程度がはなはだしい様子を表したいとき、この「とても」をよく使います。日本語を勉強する学習者もこの「とても」をよく多用します。
ただ、何でもかんでも「とても」を使うのではなく、状況、内容に応じて他の表現を使うことが大切です。
●これだけは押さえよう!
とてもは
やわらかい話しことば。
感情を表現したいときに使う。
論文など硬い文章には使わない。
・このパンは大変おいしいです。△
・このパンはとてもおいしいです。〇
「おいしい、面白い、痛い」など話し手が感情を込めて表現したいときには「とても」を使ったほうが自然に感じられます。
・少子高齢化は日本でとても深刻な問題だ。△
・少子高齢化は日本で大変深刻な問題だ。〇
「深刻な問題」という言葉にやわらかさは感じない。
ここでは、大変という言葉が適しています。
ビジネスシーンでよく耳にする「大変」
大変お世話になりました。
「大変申し訳ありません」
芸能人の謝罪会見などでよく耳にしますし、
「大変失礼しました」「大変お待たせ致しました」
などビジネスシーンでもよく耳にします。
そもそも「大変」とはどのような意味なのかと言うと、
大変
(副詞)
普通の程度をはなはだしく超えているさま。たいそう。
※大辞林第三版
「とても」と意味合いは同じですが、「大変」のほうが事柄・行為に対する「驚き」が大きいです。
●これだけは押さえよう!
大変は
その事柄・行為の程度を誇張的に表したいときに使う。
やや改まった感じ。
・とてもお世話になりまして、ありがとうございました。△
・大変お世話になりまして、ありがとうございました。〇
やや改まった感じで程度が大きいことを言いたいので、「大変」が適しています。
非常に
非常に高い「松」の木があった。
●これだけは押さえよう!
非常には
書きことば的。
「高い」「太い」「忙しい」「静か」など
性質や状態を表す形容詞につく。客観的。
・とても悲しい。(話しことば)
・非常に悲しい。(書きことば)
一番
一番好きな果物はメロンです。
それ以上(以下)の程度のものはない、最高(最低)の程度であることを表します。
●これだけは押さえよう!
一番は
何らかの特定した枠組みがあり、その中で最高(最低)だという時に使う。
・一番好きな動物は象です。(さまざまな動物がいる中で)
・このアニメの中で、だれが一番好きですか?(たくさんキャラクターがいる中で)
かなり
彼女はかなり酔っているようだ。
「非常に」「とても」「大変」ほどではないが、事柄・行為の程度が平均以上であることを表すときに使います。
●これだけは押さえよう!
かなりは
書きことば的。
客観的。
・前年に比べて、非正規社員がとても多い。△
・前年に比べて、非正規社員がかなり多い。〇
客観的な文なので、「かなり」が適しています。
他にも、
このほかにも、程度がはなはだしいことを表す表現がいくつかあります。
●よく
・よく晴れた日。
・彼はよく走る。
●あまりに
この時期はバスや電車があまりに渋滞するので、とてもつらい。
※「あまりに」は強調の度合いが高く、やや堅い表現。
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