ら抜き言葉
ら抜き言葉とは可能表現から「ら」が抜ける現象を言います。
日本の動詞は第一、第二、第三グループと3つに分けられます。
学校文法でいうところの五段活用(第一)、一段活用(第二)、カ行変格活用・サ行変格活用(第三)です。
下の図を見たら分かるように
第一グループにはもともと「ら」がないので、「ら抜き言葉」は第二グループと第三グループ「来る」だけに見られる現象です。
第二グループの動詞を使って「可能」を表現する場合、
「この恐怖の館から出られました」というように使うのが正しいです。
「ら」を抜いて「出れました」というのは誤用です。
同じく第二グループの「見る」「食べる」などはよく「ら」を抜いた表現で使われるのをみかけます。
・オーロラが見れます。
・エビが食べれません。
正しくは、
・オーロラが見られます。
・エビが食べられません。
です。
私もよく使います。
この「ら抜き」の現象が生じてしまう理由として、
第二グループの「られる」という言い方が可能表現、受身表現、尊敬表現と3つの表現で使われているからです。(上の図参照)
①私はエビを食べられます。可能
②そのエビは田中さんに食べられました。 受身
③田中さん。このエビ、食べられますか? 尊敬
全部同じ「られる」なので、すぐに理解するのが簡単ではありません。
特に③ですが、
「食べることができますか?」と聞いているのか
「召し上がりますか(食べますか)」と聞いているのか
区別が難しいです。
さらに普段の会話では主語を抜いて話すことが多いので、なおさらです。
そこで、生まれたのが「ら抜き」言葉です。
「食べれますか?」と言えば、「食べることができますか」と聞いていることがすぐに分かります。
このように可能表現なのか尊敬表現なのかが理解しやすいように「ら抜き」が浸透していったのではないかという見解があります。
社会一般で「ら抜き」がよく使われていることから、
日本語の専門家、研究者の中にも、
「ら抜きは日本語の乱れというよりも必然である」
と言う意見があります。
しかし、
「話し言葉はいいが、書き言葉で使うのはダメ」
「改まった場所では使うべきではない」
という意見もあります。
誤用は誤用ですので。
ただ、広く使われているのは事実なので「ら抜き」言葉があたりまえになる時代もそう遠くはないかもしれません。
「さ入れ」言葉と「い抜き」言葉
「ら抜き」言葉の他にも同じような誤用があります。
●さ入れ言葉
本来、「さ」が入っていない第一グループの使役形に「さ」を入れて使用する現象を言います。
・学生がひらがなを書きます。
・先生が学生にひらがなを書かせます。(使役形)
使役形は主語が人に何かをさせるときに使います。
「さ入れ」言葉は、
「書かさせます」
「読まさせます」
「走らさせます」
など、
いらないのに「さ」をつけてしまう現象です。
ただ、第一グループであっても、もとから使役形が「~させる」という言い方(サ行の動詞)の場合はこの現象は起きません。
例:「話す」→「話させる(使役形)」
「さ入れ」言葉は「ら抜き」言葉に比べると使用率は低いようです。
●「い抜き」言葉
「ら抜き」言葉と同じように、
本来あるはずの「い」を抜いて使用する現象です。
・ご飯を食べています。
・ご飯を食べてます。
「~ています」という表現が正しいですが、「い」が抜けています。
「い抜き」言葉は話し言葉でよく使われていて、「い」をつけるほうが違和感があります。
この表現も許容されてきていますが、
公式な文書を作るとき
上司や取引先とのメールでのやりとり
など
大事な「書き言葉」で使うときは意識して注意したほうがいいです。
まとめ
今回は
・ら抜き言葉
・さ入れ言葉
・い抜き言葉
の3つを紹介しました。
抜いたり、入れたり。
私たち日本人が自分たちの使いやすいように「言葉を変化」させていると考えると
「なんだか尊いな」と感じます。
社会に広まっているこの「誤用」を
使うべきか、使わないべきか
「場」に応じてしっかり使い分けることと、
自分自身で「これは誤用だ」と意識していることが大事なのかなと思います。