「ブッダの教え」を参考にして「悩みのなくす方法」について今までお伝えしてきました。
【復習(前々回と前回)】
①悩んだらまず、理解する。
「私は今悩んでいる」
②「心はもとめつづけるもの」と理解する。
悩みの原因は、むだな反応。
さらに、その反応の背景には「求める心」がある。
「私は今求めている」
今回で「悩みをなくす方法」についての記事は最後になります。
今回は、「ブッダの教え」に基づいた実践的な方法をお伝えしていきます。
人がもっとも悩みを抱える原因は○○欲!
前回の記事で、ブッダが発見した欲求について少しお伝えしました。
食欲や睡眠欲は生きていくうえで欠かせないもので、感楽欲も、人生を楽しむうえでは大切なものです。
ただ、このような欲求の中で、もっとも「むだな反応」の原因となる欲求は、
ずばり「承認欲」です。
マズローさんの「欲求五段階説」では、自己実現に向けて「承認欲求」は不可欠なものです。生きていくうえでは切り離せないものですし、その欲求自体はいいものだと思います。
しかし、承認欲は「むだな反応」が生じやすく、現代に生きる私たち人間の「悩み」はほぼここからきているといっても過言ではありません。
【例】
「親に好かれたい」
「好きな人に振り向いてほしい」
「友達に好かれたい」
「人気になりたい」
「活躍したい」
「出世したい」
などなど
要するに
「自分を認めて欲しい」という承認欲があるわけです。
「自分はあの人よりすぐれている」という優越感も
「あの人と比べて自分はぜんぜんダメなやつだ」という劣等感も
それから生まれる嫉妬心などもすべて
承認欲が原因です。
今までお伝えした「ブッダの教え」を使ってみると、
まず理解する。
例えば、
「仕事でミスをした」という悩みがあります。
まずはこの悩みを理解します。
「私は仕事でミスをした。だから今悩んでいる」
次に、悩みの原因を見つけます。
なぜ悩むのか?
「上司に怒られるから」
「自分の評価が下がるから」
などがありそうです。
では、なぜ「上司に怒られたら嫌なのか」「自分の評価が下がったら嫌なのか」
それは求める心があり、
「上司に認められたい」「自分の他人からの評価は高くありたい」などの承認欲があるからです。
そしてまた理解します。
「私は今承認欲を持っている」
人は、苦しみの正体について、正しく理解すべきである。苦しみの原因を断つべきである。苦しみのない境地にたどり着くべきである。その方法を実践すべきである。私は確信するに至った。もはや苦しみ戻ることはないと。
※ブッダ最初の説法 マハーヴァッカより
「自分の悩みを自分自身で知っている」
これは、とても大事なことです。
心の中で自分が持っている欲求を感じてみましょう。
「私は今、○○欲を持っている」と声に出して言ってもいいです。
「むだな反応」をおさえる方法
嫌なことがあって落ち込んだり、不安になったり、心配したり。
これは「むだな反応」です。
「この反応の背景にはどのような欲求があるのか」と自分自身で理解することが大事でした。
そして、「むだな反応」をおさえるために大事なことがもう一つあります。
それは、自分の「心の状態をきちんと見る」ことです。
常日頃からこの習慣を身につけておくと、「むだな反応」をしにくくなります。
では、「心の状態をきちんと見る」とはいったいどういうことなのか?
いまから3つの方法を具体的に紹介します。
①言葉で確認する
これは、今までお伝えしてきた「理解する」という方法と似ています。
例えば、スピーチやプレゼンがあるときって緊張しますよね。
スマホやテレビを長時間見たりしていると、頭がボーっとしますよね。
こんなときに
「私は、緊張している」
「私は、頭が混乱している」
と確認してください。
目をつむって行うとよりいいです。
普段の生活の中でも、
掃除をしている時に「私は今、掃除をしている」
食器を洗っている時に「私は今、食器を洗っている」
パソコンを使って仕事をしている時に「私は今、パソコンで作業している」
と自分の動作を確認します。
こうやって、自分の心の動作、身体の動作を客観的に言葉で確かめる習慣を身につけます。
「言葉で確認する」ことを仏教の世界では、「ラベリング」と呼びます。
②感覚を意識する
次は「身体の感覚を意識する」ことです。
例えば、
手を強く握ります。
この時に「手を握った時はこのような感覚になるのか」と確認してください。
次に手を開きます。
この時も「開いたときはこのような感覚なのか」と確認します。
ある程度感覚が分かるようになるまで繰り返します。
同じように、
普段、道を歩いてときにも、
右足がでる感覚、
左足がでる感覚、
地面に触れた時の足の裏の感覚
などを確認します。
寝る前にも横になって、
空気を吸い込む感覚、
空気をだす感覚、
お腹が膨らむ感覚、
お腹が縮む感覚
などを確認します。
この「感覚を意識する」ことは、疲れやストレスが溜まったときにも有効です。
「言葉で確認する」「感覚を意識する」
これらを常日頃から意識すると、むだな反応は止まり、心に静けさと落ち着きを与え、集中力も高まります。
※これらの「心の状態を見る」ことを瞑想の世界では「マインドフルネス」と呼びます。
③分類する
次は、心の状態を分類することです。
分けることによって「自分が今どのような状態なのか」を観念的に理解することができます。「言葉で確認する」ことと少し似ています。
分類して「自分が今どの状態にいるのか」を確認してください。
基本的に心の状態は以下の3つに分類できます。
①貪(とん)
②瞋(しん)
③痴(ち)
仏教の言葉ですね。
貪とは、欲望、執着のこと
瞋とは、怒り、怨恨のこと
痴とは、妄想、愚かさのこと
です。
心の迷いを表す言葉で、これらの3つは「三毒」と呼ばれます。
これがいわゆる「煩悩」です。
仏教の世界では、この「煩悩」を滅することで苦しみから逃れ、悟りを得ることができるとされています。
では、この三毒を1つ1つ見ていきましょう。
①貪
これは、過剰な欲求なことです。
「あれも欲しい、これも欲しい」
「もっとしたい」
など「求めすぎる心」から生まれます。
人間関係をめぐる不満はだいたい「貪」から生まれます。
②瞋
これは、「怒り」です。
不満・不快を感じている状態です。
「イライラしている」
「機嫌が悪い」
などですね。
「怒り」を放っておくと、
どんどん蓄積されて、
「怒りっぽい性格」「気難しい性格」が出来上がったり、
「欲求不満」になったりしてしまいます。
③痴
人間が最も得意とする「妄想」のことです。
楽しい妄想だけならいいですが、
「あの人は私のことをどう思っているのだろう」
と考えこんだり、
「私はこの先どうなるんだろう」
と先の見えない未来に不安を感じたりする
などなど
このような「むだな妄想」もありますよね。
しかも厄介なのは、
①貪②瞋と違って③痴は自分自身で理解するのが難しいことです。
というのも「妄想というのは、無意識のうちにはまっているもの」だからです。
私たちは、たいてい「妄想」していたことに「後で」気づきます。
だから、「私は今、妄想している」と理解するのは難しいです。
「妄想」に関して言えば、
「妄想している状態」と「妄想以外の状態」を理解することが重要です。
そのやり方は、
まず目を閉じて、暗闇の中に思い浮かべます。
今朝食べたもの、読んだニュースのタイトル、テレビでみた映像などなどです。
次に、目をパっと開き、前を見ます。
部屋の中や外の景色を眺めます。
さっきまで脳裏で思い浮かべていたものは存在しませんね。
「さっき見ていたものは妄想である」
「今見ているものは、視覚である」
はっきりと意識してください。
そのうえで、2番で述べたような「身体の感覚」に意識を向けます。
「妄想」と「感覚」の違いを理解して、「感覚」の方に意識を集中させる習慣を作っていきます。
以上
①言葉で確認する
②感覚を意識する
③分類する(貪瞋痴)
でした。
まとめ
今回は、身体を使った「理解」も紹介しました。
特に②で紹介した「感覚を意識する」ことは私たちの生活の中で大いに使えます。
悩みというのは、常に「心の内側」に存在します。
だから悩みをなくすには、「心の外側(身体の感覚)」に意識を向けることが大事です。
ぜひ、普段の生活の中でどんどん実践してみてください。
今回で「悩み(苦しみ)をなくす」方法についてはおしまいです。
いかがったでしょうか?
少しでもみなさんの生活に役立てることができたら幸いです。
これからも、「ブッダの教え」を基にした楽しく生きるための「考え方」を伝えていきます。
ぜひ、お待ちください!
さいごに、ブッダから一言。
人は”求める心”によって、苦しむ。
ゆえに汝は”求める心”を、正しい道に立つことで手放せ。
そして再び”求める心”に囚われて、苦しみの人生に舞い戻らないようにせよ。
※スッタニパータ<彼岸への道>の章
【参考著書】
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